【獣医師監修】猫におやつを与える頻度と量 おやつ選びで注意したいポイントは?
おねだりされると、ついあげたくなってしまう「おやつ」。でも、猫におやつは必要なのでしょうか。そして、おやつをあげる場合、どんなことに注意すればよいのか?正しいおやつの与え方とは?おやつをあげる頻度や量、選び方から、そのポイントを紹介します。
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監修者:林 瑞木
酪農学園大学 獣医学群 獣医学類 卒業。アイシア株式会社入社。日本獣医腎泌尿器学会所属。
〈資格〉獣医師、ペット栄養管理士、ペットフード安全管理者
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猫におやつは必要?
猫におやつは必要なものなのでしょうか。栄養の視点からだけ見れば、必要な栄養素がバランスよく入っている総合栄養食のフードをきちんと与えていれば、おやつは必ずしもあげなくてもいいものです。でも、人間と同じように、猫にとっておやつはとてもうれしいもの。空腹を満たし栄養を補給すること以外に、おやつにはいくつかの役割があります。まずは、そこから見ていきましょう。
猫にとってのおやつとは?
主食のごはんとしてのフード(総合栄養食)が総合的な栄養バランスを考えたものであるのに対し、より猫の嗜好(しこう)性や好みに沿って作られたものがおやつです。
メインのごはんをきちんと食べていれば、おやつはあげなくても大丈夫ですが、人間だっておやつが欲しくなるように猫にとってもおやつは大きな楽しみ。ただ栄養を補給しお腹を満たすだけでなく、心を満足させたりストレスを解消したり、人間とのコミュニケーションの手だてとしてなど、いろんな意味や目的があります。
おやつにはどんな目的や役割があるの?
おやつを与える時には目的をもって与えるのが正しい与え方。その例をいくつか見ていきましょう。
コミュニケーションのため
猫と触れ合ってコミュニケーションするのと同じく、おやつをあげるのも大切なコミュニケーションの手段となります。特に長時間のお留守番のあとには、おやつを取り入れながら触れ合いの時間をとるとよいでしょう。
猫のストレスケア、本能を満たす
「遊んでごはんを食べる」という行為は野生の生活でいえば狩りに当たります。家猫はどうしても狩りの本能を満たしてあげられることが少なく、そのことがストレスにもつながるといわれています。毎日遊んで、遊んだあとにはおやつを与えることで猫の気持ちや本能を満たしてあげることができるでしょう。
ごほうびとして、嫌なことを乗り切るため
猫にとってどうしても嫌なことをしなければいけない時に、嫌な気持ちをまぎらわすため、おやつを与えることもあります。お留守番だけでなく、きちんと爪切りができた、ちゃんと病院へ行けたなど、猫が嫌なことを乗り切れたらごほうびとしておやつを与えてあげましょう。
時間が空いてしまうと、なぜおいしいものをもらえたのかわからなくなってしまうので、嫌な思いをしている最中や、嫌なことを乗り切った直後におやつを与えることがポイントです。栄養補給のため
市販の総合栄養食をきちんと食べていれば必要な栄養素は摂取できますが、いつもの食事に飽きた、あまり食欲がない時などには、栄養補助や食欲増進のためにおやつが有効です。あまり水を飲まない猫にはウェット系おやつが水分補給に役立ちます。
おやつはいつからあげていい?
小さな子猫にもおやつはあげていいのでしょうか。あくまで目安ですが、3~4ヶ月齢くらいまでは栄養管理がとても大切なので、食事でしっかり栄養を与えることが大切。おやつを与えるのはそれ以降にしましょう。
猫のおやつの頻度と量は?
おやつはどのくらいの頻度で、どのくらいの量をあげれば適切なのでしょうか。猫とのコミュニケーションや躾(しつけ)の手だてにもなるので上手におやつを活用するのもひとつです。ここでは、頻度と量のポイントを紹介します。
おやつをあげる頻度は?
おやつをあげる頻度については、特に決まりはありませんが、理由なくあげるのではなく、コミュニケーションやごほうび、躾の手だてとして与えるタイミングを意識するようにしましょう。理由なくおやつを与え続けていると、おやつの特別感や価値が薄れてしまうこともあります。
おやつをあげる量は?
おやつはどのくらいの量が適正なのでしょうか。おやつの量は、猫が1日に必要とするエネルギーの20%以内が適正とされています。例えば、体重4kgの成猫なら、1日分のおやつ(間食)の量は以下のような計算になります。
健康な成猫の一日に与えられるおやつ(間食)量の例
- 4kgの猫ちゃんの1日に
必要な摂取カロリー(中央値)160kcal - おやつ(間食)の割合0.2(20%)
- おやつ(間食)の量32kcal
ポイントは一度にたくさん与えず、少量ずつ与えることです。
おやつのあげすぎに注意!
おやつを食べすぎて、主食のごはんが食べられなくなってしまうのも猫にとってはよくありません。おやつはおいしくするため味をはっきりさせ、ごはんよりやや濃い味付けになっていることが多く、偏食になることもあります。欲しがるままに与えるのはかえって猫のためによくありません。
また、カロリーオーバーにより肥満になることもあるため、栄養はきちんと主食で摂るようにして、適正体重を維持できるように心掛けましょう。
猫のおやつにはどんな種類があるの?
市販のおやつには様々な種類があり、それぞれに機能や特色があります。ここでは、おやつの種類や選び方のポイントを紹介します。
おやつの種類
ドライタイプ
いわゆる「カリカリ」タイプのドライフードです。1回のおやつで食べきるように小分けパックになっており、持ち運びにも便利です。
ウェットタイプ
パウチ、スープなどのウェットタイプのおやつ。水分補給の助けにもなり、あまり水を飲まない場合に最適です。
ガムタイプ
噛むことでオーラルケアができるガムタイプです。いろいろな硬さや形状のものがあります。歯石は奥歯に付きやすいため、しっかりと奥歯で噛めるタイプがよいでしょう。
ジャーキー
肉や魚を干した保存食タイプ。ガムタイプ同様、オーラルケアになるものもあります。
フリーズドライ
魚や肉など素材を凍結乾燥させたもの。栄養素が保たれ、添加物がないので安心です。常温で長期保存もできます。
煮干し、かつお節
煮干しやかつお節も猫が大好きなおやつです。噛み応えがある煮干しなどはオーラルケアにもなるでしょう。ただし、人が食べるものは塩分の高いものもあるので、猫用を与えるようにしましょう。
このほかにも、ミルク、低カロリーや無添加のタイプ、保存料や着色料を使ってないものなど、健康志向のおやつも多くあります。ミルクを与える場合、牛乳だとお腹がゆるくなってしまうため、猫用ミルクを与えるようにしましょう。
どんなおやつを選ぶべき?
ではどんなおやつを選べばいいのか。猫の年齢別に見てみましょう。
幼猫期(1歳まで)
幼い頃から様々な種類の食感や味に慣れ親しむことで、食の幅が広がることもあります。成猫になってから新しい食事に挑戦しようとしても、警戒し受け付けてくれないこともあるため、幼いうちにいろいろなおやつを与えてみましょう。
成猫期(1歳~6歳頃)
家猫の場合、運動量が少なく肥満になりがちです。おやつは体重管理をしながら与え、おやつの内容よりも運動とセットで与えることを意識するのがよいでしょう。
シニア期(7歳頃~)
シニア期は、代謝の変化により、年齢を重ねるにつれ体重が落ちていきます。おやつは食欲をアップさせる手段として、猫がよく食べてくれるものや、カロリーを補う目的で選んでもよいでしょう。歯が弱ってきた猫には食べやすいペーストタイプやスープタイプがおすすめです。
人間の食べものはなるべく与えないように
人間の食べものは塩分や糖分の摂取過多になるほか、猫にとって害のある場合もあります。チーズやアイスクリームなどの乳製品は、猫が欲しがってついつい与えたくなりますが、それらは塩分や糖分がたくさん含まれています。おやつとして人間の食べものを与えるのはなるべく避けましょう。また、犬用のドッグフードも猫には不適切なこともあるので注意しましょう。
まとめ
おやつは猫とのコミュニケーションの手だて、躾やねぎらい、ごほうびの意味をもつフードとしてタイミングよく与えましょう。ポイントは与えすぎに注意すること。1日に必要なエネルギーの20%以内を目安として、少しずつあげることが大切です。おやつにはいろいろな種類があり、それぞれの味、形状、機能は様々です。猫の嗜好、年齢、状態によって、試しながらベストなものを選びましょう。