【獣医師監修】猫がごはんを食べないのはなぜ?食欲不振の原因と対策
今回は、猫がごはんを食べないのはなぜなのか?食欲不振の原因や対処法、症状の見極め方について紹介します。
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監修者:姫田 夏子
大阪府立大学(現 大阪公立大学)生命環境科学域獣医学類卒業。
<資格>獣医師
日本獣医動物行動研究会所属、東京農工大学動物医療センター動物行動科研修医
動物病院で犬猫の診療に従事後、アイシア株式会社に入社。
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猫の食事で日頃から観察しておきたいこと
猫がごはんを食べてくれないと心配ですよね。ただ、年齢や個体差による違い、もともと食が細い子や気まぐれの場合もあり、ごはんを食べないからといって必ずしも健康に問題があるとは限りません。
病気かどうかを判断するには、普段のごはんの食べ方を把握しておくことが必要です。飼い主さんは、普段の猫の様子をしっかり観察するようにしましょう。
食べない場合、どのくらいの期間ごはんを食べていないか?
猫がごはんをあまり食べない日があっても、元気な様子であれば、それほど重大な問題ではありません。食べる量が減ってしまった、いつも食べていたごはんを食べない、という状態が2~3日続く場合、食欲不振といえます。
いつもより元気がなく、まったく食べない状態、もしくはほとんど食べていない状態が1日(生後半年以下であれば12時間程度)続いているようであれば、症状が出ていなくても動物病院へ連れて行きましょう。
特に太っている猫が急にごはんを食べなくなり48時間を経過すると、肝リピドーシス(脂肪肝)という病気になってしまう危険があり、最悪の場合は死に至る病気です。食べてくれない状態が続くようであれば早めに動物病院に連れて行きましょう。
猫がごはんを食べないのはなぜ?考えられる原因と対処法
病気、食事、加齢、環境変化など、さまざまな理由で、猫が食欲不振になる可能性があります。それぞれの対処法についてみていきましょう。
病気
消化器系や泌尿器系の病気、感染症など、あらゆる病気で食欲不振がみられます。病気が進行していくと、徐々に食欲が落ちていく場合もあれば、ある日突然食べなくなる場合もあります。日頃から猫の様子を観察するようにして、食欲不振の症状とともに、体調や行動の異常がないか気づいてあげられるようにしましょう。
食事
猫にもごはんの好き嫌いがあります。たとえ空腹であっても、好みではないごはんには、見向きしてくれないこともあるでしょう。また、今までのキャットフードに飽きてしまい、ごはんを食べないケースも考えられます。
そこで大切なのが、猫の好みを見極めるべく、ごはんの内容の見直しです。ドライフード派の猫であればウェットフードを与えてみる、今までのフードに新しいフードを少しずつ混ぜてみるなど試してみてください。
また、子猫の時期によく口にしていた食べ物のにおい、味や食感を好む傾向があることも押さえておきましょう。
環境
ストレスの多い環境が原因で、猫がごはんを食べなくなっているケースもあります。たとえば、引っ越しをした、新たに別のペットを飼い始めた、飼い主さんの家庭に赤ちゃんが生まれた、猫のトイレの近くにごはんを置いていたなど。
また、夏の暑い時期など季節による食欲不振や、ワクチンや健康診断で病院に連れて行ったあとなども食欲不振になることがあります。
特に引っ越し後は、新しい環境に慣れるまでストレスを感じるものです。できる限り、猫の毛布やトイレ、キャットタワーなど、猫のにおいがついたものは、引っ越し先でもそのまま使うようにしましょう。
多頭飼いを始めた場合は、それぞれの猫が安心できる自分の居場所を確保できているかなど、見直してみましょう。
また、リモートワークや子供の夏休みなど、飼い主の生活の変化によっても、猫の生活のリズムが乱れ、食欲不振につながることがあります。そのような場合、猫に構いすぎないようにすることも大切です。猫がリラックスして過ごせる環境を作ることを心がけましょう。
加齢
猫も年をとると睡眠時間が増え、運動量も減ってきます。活動量が減少することで、食欲が落ちることがあります。また、消化機能が衰えて食欲が低下することもあります。
老齢になると、病気のリスクも高まり、それによる食欲不振の可能性もあるので、他に症状がでていないか、よく観察してあげましょう。
食欲不振のとき、こんな症状がないかチェック
食欲不振のとき、他に症状がでていないか?また、どんな症状があるときにすぐに病院へ連れて行く必要があるのでしょうか。
元気がなくなった
いつもと比べ、元気がなくなっていないか?普段より遊ばない、動きが悪いなどの他、押し入れなどに隠れる、人がいない部屋にこもっている、というのも元気がないサインです。
水を飲む量が増えた
猫では腎臓病や糖尿病、甲状腺機能亢進(こうしん)症により水を飲む量が増えます。お皿の水が1日でどのくらい減るか、一度測ってみるのもよいでしょう。
食べたいけど食べられない
食事に向かうそぶりは見せるもののフードを食べない、食べたときに痛がる場合、口腔内に何らかのトラブルがある可能性があります。
吐く
食べた直後にフードを1~2回吐いただけであれば様子をみて問題ありません。しかし、1日に何度も吐く、何も出てこないが吐こうとしている場合は緊急の場合があり、注意が必要です。よくおもちゃで遊ぶような猫であれば、おもちゃを飲み込んでしまい、腸などに詰まり嘔吐する場合もあります。
また、頻回ではないにしても、3~4日続けて吐いている場合も問題があることがあります。いつもと違う様子であれば、早めに動物病院へ連れて行くようにしましょう。吐いたものの写真を撮っておくと、診察がスムーズなケースもあります。
おしっこが出ていない
若いオスでは特に尿路閉塞(へいそく)に伴う突然の嘔吐や食欲不振が多く、緊急性の高い症状です。元気がなく、排尿もないようであれば、動物病院ですみやかに診察を受けましょう。
猫にごはんを食べてもらう方法
病気ではなく、環境の変化で一時的に食欲不振になっている場合や、健康だけどもともと食が細い猫の場合、どのようにごはんを食べてもらったらよいのでしょう。
環境の変化で一時的に食欲不振になっている場合
季節の変わり目や環境の変化など、病気以外の原因で食欲が落ちている場合、次のような方法を試してみましょう。
人肌に温める
猫は40度前後のフードを好む傾向にあります。ウェットフードは温めることで香りが立ち、風味が増しますので、試してみてください。ただし、温め過ぎると嗜好性が悪くなるので注意しましょう。
安心できる場所で与える
人目につかない狭い場所の方が安心して食事に集中できることがあります。誰もいない部屋で食事を与える、仕切りを使って周りから見えないようにするなど、落ち着いた環境を作ってあげましょう。一方で、飼い主さんの手のひらにフードを出してあげると、食べてくれることもあります。
今までと違うごはんを与えてみる
いつも同じごはんをあげていると、飽きて食べなくなってしまうことがあるので、ごはんにも変化をつけてあげましょう。現在、お魚味のフードだったら、鶏肉や豚肉など、お肉をメインとしたフードに変えて様子をみてみましょう。
ドライフードが主体である猫であればぬるま湯やささみのゆで汁等でふやかしてみる、あるいはウェットフードに切り替える、ウェットフードでもパテタイプやペーストタイプを与えてみるなど、食感の違うフードに変えてあげるのも方法のひとつです。
ただし、いずれの場合でも、食べてくれたからといって急に新しいフードを増やすと、お腹がゆるくなってしまうこともあります。少しずつ与えるよう気をつけましょう。
健康だけど食が細い猫にはどうしたらいい?
病気ではなくても、もともと食が細い猫もいます。そんな猫には次のような方法を試してみましょう。
栄養価の高い総合栄養食を与える
栄養バランスの取れたキャットフードを与えることが大切です。ドライフードは水分含有量が10%程度で、ウェットフードに比べて同じ重量あたりのエネルギー量が高いため、効率よく栄養を摂ることができます。ウェットフードでお腹がいっぱいになってしまうような猫には、ドライフードの比率を増やしてみてもよいでしょう。
遊びの時間を作る
おもちゃなど使って遊ぶことで、食欲がでてごはんを食べてくれることもあります。1回5分程度でもよいので、1日に何度か遊びの時間を作ってあげるようにしましょう。体を動かすことは、食欲不振の解消だけでなくストレス解消にもつながります。
おやつを与え過ぎないようにする
おやつを食べて、ごはんを食べられなくなってしまっているケースもあります。おやつはあくまでコミュニケーションのひとつとして与えるようにしましょう。また、おやつは1日のトータルの摂取カロリーの20%までとしましょう。
まとめ
猫がごはんを食べないと心配ですが、気まぐれだったり、もともと食が細かったりする場合もあり、ごはんを食べないからといって必ずしも健康に問題があるとは限りません。
ただし、病気、食事、加齢、環境変化など、さまざまな原因があることも考えられますから、飼い主さんは、日頃から猫の様子を観察することが大切です。食欲不振の症状とともに、体調や行動の異常がみられたら、動物病院へ連れて行き診察を受けるようにしましょう。