【獣医師監修】子猫がミルクを飲まない時は?ミルクの正しい知識・与え方
子猫は1歳までに体重が20~40倍にもなって成猫と同じ体格になります。ぐんぐん成長する大切な時期だからこそ、元気にミルクをたっぷり飲んでほしいもの。しかし子猫はとてもデリケートで、さまざまな理由でミルクを飲まないことがあります。そんな時でも慌てないように、ミルクの正しい与え方や、ミルクを飲まないときの対処法を知っておきましょう。
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監修者:村田 貴輝
日本獣医生命科学大学 獣医学部卒業。動物病院で臨床を経験後、アイシア株式会社入社。
<資格>獣医師、ペット栄養管理士、ペットフード安全管理者
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正しく理解!子猫にミルクを飲ませる基本
子猫の生活に必要な物や、授乳についてなど、子猫を迎えるにあたって必要な基礎知識をご紹介していきます。
子猫をお迎えする前に。哺乳期の基本・用意するもの
子猫を迎えることが決まったら次のものを用意しておきましょう。
猫用キャリーバッグ
子猫の匂いのついたタオルなどを入れておくなどして、普段から猫用のキャリーバッグに慣れさせておきましょう。動物病院への通院や震災時の避難など猫と移動するためにもキャリーバッグは必要です。
トイレ
猫はとてもきれい好きです。トイレをすぐに掃除できない場合は、2つ用意しましょう。掃除用のスコップ、猫砂、ペットシーツなども必要です。なお、ペットシーツは動物病院への通院時などキャリーバックでの移動の際に、キャリーバッグに敷いておくと便利です。
ベッド
子猫が安心して落ち着ける静かで、日当たりの良い場所にベッドを設置してください。市販の猫用ベッドがない場合、カゴや段ボールにブランケットやタオルを入れることでも代用できます。生後3週頃まで子猫は自分で体温調整ができないので、冬はペット用ヒーターや湯たんぽを使用するなどして寒さに注意してください。
ごはんと水飲み用の食器
食器はごはん用と水飲み用の2つを用意しましょう。安定感のあるもので、ごはん用は子猫が食べやすい浅めのもの、水飲み用は少し深さがあるものがおすすめです。
フードと新鮮な水
生後1ヶ月頃までの哺乳期は、猫用ミルクを与えるため専用の哺乳瓶やスポイトも必要です。生後1ヶ月以降の子猫には離乳食を用意します。子猫用のウェットフードや、ドライフードをお湯でふやかしたものを与えます。水飲み用の食器には常に新鮮な水を入れておきます。
猫用のおもちゃ
子猫は遊び盛りです。たくさん遊んで運動ができるように、猫じゃらしなどのおもちゃを用意しておきましょう。
爪とぎ
生後5週頃以降の子猫には爪とぎを用意してあげましょう。
上記のもの以外にも、次のものがあると便利です。
消臭グッズ | 猫が粗相をしてしまったときに活躍します。 |
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粘着カーペットクリーナー | 猫の毛は、衣類やソファ、ラグなどの布類に絡まりやすいので、粘着カーペットクリーナーでのお掃除が便利です。 |
また子猫を迎えるにあたって、部屋の中の危険なものは片づけておきましょう。誤飲や誤食の原因になる糸や電気ケーブル、ボタンなどの小さなものや有害な植物や洗剤などは、子猫が触れることができないようにしておきましょう。
授乳は生後いつまで?ミルクをあげる時期と回数・量
子猫の哺乳期は生後1ヶ月頃まで。この時期は、高脂肪・高タンパクな母乳か、子猫用ミルクだけで育てます。
市販されている子猫用ミルクには、初乳の免疫成分を含んだものや、お湯に溶かして作る粉末タイプのもの、温めて使用する液体タイプのものなどがあります。
ミルクは子猫用の哺乳瓶やスポイトなどで飲ませます。ミルクをどれくらい飲めているのか、吐き戻したりしていないか、体調に変化はないかなど、ミルクを飲ませている最中だけでなく飲ませた後も、子猫からできるだけ目を離さないように注意を払いましょう。
ミルクの量と授乳回数の目安はおおよそ以下のようになります。ミルクの量は、与えるミルクの銘柄によって多少異なります。量や回数は目安程度に、子猫の様子をよく見て柔軟に対応しましょう。
生後1~7日 | 5~10ccずつ1日に8~12回 |
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生後8~14日 | 8~15ccずつ1日に4~8回 |
生後15~21日 | 欲しがるだけ与えてOK、1日に4~6回 |
生後22~30日 | 離乳食を与えてからミルクを与えます。ミルクは徐々に減らして離乳へ |
牛乳は避けて!子猫用ミルクの正しい選び方
子猫に牛乳はおすすめできません。子猫は牛乳に含まれる乳糖という成分を分解する酵素を持っていないため、牛乳を飲むとお腹を壊してしまう恐れがあります。特に生まれて間もない子猫にとってお腹を壊すことはとても危険なことです。また、牛乳にアレルギーを持っている可能性もあります。子猫には必ず栄養成分が豊富な子猫用ミルクを、成猫にも必ず猫用ミルクを与えるようにしましょう。
子猫に負担をかけないミルクの正しいあげ方・飲ませ方
子猫にミルクを与える際の正しい方法をご紹介していきます。
母猫に代わって子猫にミルクを与えるのは意外と大変です。ミルクの準備から排泄のお世話、ミルクを飲み終わった後の様子も注意深く見てあげる必要があります。しかし大変な哺乳期はわずか。かわいい子猫が健康に育つように頑張りましょう。
ミルクを与える前の準備
ミルクを与える前に準備することは、次の3点です。
子猫の排便排尿を済ませる
子猫は生後3週頃まで自力で排泄することができず、母猫が子猫のお尻を舐めて処理をしてくれます。そのため母猫がいない場合は、飼い主が母猫の代わりに子猫のお尻をティッシュなどで優しく刺激して排泄を促してあげましょう。お腹がすっきりしてミルクを飲みやすくなります。
哺乳瓶を用意
子猫用のミルクは脂肪分が高いため、哺乳瓶に汚れが残りやすいので洗浄はしっかりと行ってください。さらに哺乳瓶は使用後に煮沸や哺乳瓶用の消毒液を使って消毒しておくと安心です。特に生後間もない頃や、体調を崩している場合は感染症の恐れがあるので清潔な哺乳瓶でミルクを与えるようにしましょう。
ミルクを作る
粉末タイプの子猫用ミルクを与える場合は、パッケージに記載されている作り方・量を守りましょう。ミルクが濃いと消化できないことがあるので、生後間もない頃やミルクの与え始めは、パッケージに記載されている濃度より少し薄めに作ったミルクから始めて、下痢をしていないかなど、体調をよく見ながら規定の濃度に近づけていきましょう。
ミルクを与える際の適温は人肌程度(37~38度)です。手首にミルクを垂らしてみて、熱くないか、冷たくないかを確認してから与えてください。
ミルクの正しい飲ませ方・姿勢
子猫にミルクを与えるときは、人間の赤ちゃんのように仰向けにせず、腹ばいにして与えます。子猫が空気を吸ってしまわないように、哺乳瓶は逆さにして乳首をミルクで満たしてから口元に近づけてあげましょう。口に乳首を入れてあげたら、子猫が自分でミルクを吸います。優しく後頭部を支えてあげるなど、ミルクを飲みやすい姿勢をサポートしてあげてください。
口の周りにミルクが溢(あふ)れたり、子猫が首を振るなど、イヤイヤする動作を見せたらお腹いっぱいの合図です。口の周りをきれいに拭いてあげましょう。
ミルクをお腹いっぱい飲んだ後は、人間の赤ちゃんのように、優しく背中をさすってあげてゲップをさせます。
ミルクを与えるときの注意点
子猫にミルクを与えるときは、ミルクは作り置きをせずに必ず授乳のたびに作るようにしてください。
またミルクを飲まないからといって、強引に飲ませることはおすすめできません。気管に入ってしまって、肺炎の原因になることがあります。
逆に子猫の食欲が旺盛でミルクをもっと飲みたいとせがまれても、与えすぎは体調不良の原因となることがあるので控えましょう。ミルクのパッケージに記載されている量をできるだけ守って、過剰に与えすぎることはやめてください。
もしミルクを飲んだ後に吐き戻してしまったら、すぐにまた飲ませるようなことはしないで、少し時間を空けてから吐き戻してしまった量のミルクを飲ませましょう。
子猫がミルクを飲まない?原因と対処法
子猫がミルクを飲まない原因は意外なところにあるかもしれません。
ミルクを飲まない場合の代表的な原因と対処法をご紹介していきます。
お腹いっぱいのサイン?排泄をチェック
子猫がミルクを飲んでくれないときは、お腹をさすってみて、お腹が張っていないか確認してみてください。オシッコと便が溜まっているかもしれません。排泄が済んでいないと、子猫はお腹がいっぱいだと思ってミルクを飲んでくれないことがあります。ミルクを与える前にオシッコと便を済ませてあげるようにしましょう。
衰弱・脱水症状?健康状態をチェック
ミルクを飲まない場合、体調不良のサインかもしれません。
子猫はとてもデリケートです。生後3週頃まで自分で体温を維持することもできないので、温度管理も重要です。ペット用ヒーターや湯たんぽなどで保温を心がけて、身体が冷えていないかのチェックをこまめに行うようにしましょう。また授乳回数と量、体重がどれくらい増えたか、体調の変化などの記録を取っておくと子猫の成長を正確に把握できて安心です。
もしミルクを飲まずにぐったりしている、口の中の粘膜が乾いている、皮膚を引っ張ってもなかなか元に戻らない、などの場合、脱水症状を起こしているかもしれません。他にも保温しているのに体温が低い、吐いている、などの異変がある場合も、急いで動物病院を受診してください。
ミルクの味や哺乳瓶があっていないのかも?
ミルクの銘柄を変えることで、飲んでくれるようになることもあります。子猫の好みのミルクを探してあげましょう。
また哺乳瓶の乳首が合わないことが原因で飲んでくれないこともあります。猫用の哺乳瓶は、乳首部分に穴を開けて使用します。穴が小さいと吸うのに疲れてしまい、穴が大きいとミルクが出すぎて誤嚥(ごえん)の危険があります。哺乳瓶を逆さにしたときに、ミルクがにじみ出るくらいの大きさで調整してください。
まだ生後間もない子猫の場合は、猫用の哺乳瓶だと大きすぎることがあります。そのような場合は、シリンジやスポイトを使って、舌にごく少量のミルクを垂らしてあげながら与えてください。
ミルクを飲まない状態が続いた場合は獣医へ
元気な様子だけど、どうしてもミルクを飲んでくれない場合は動物病院へ連れていきましょう。子猫は生後2週頃までは、8時間以上ミルクを飲まないでいると低血糖を起こしてしまう恐れがあります。動物病院では、栄養チューブによる授乳を行ってもらえます。