猫ちゃんのごはん事典
猫ちゃんのごはん事典

猫ちゃんとのHappy Life のために
監修:桑原動物病院副院長 桑原久美子

  • 大切なパートナー あなたの猫ちゃんを迎える前に
  • すべての基本 猫ちゃんの食事
  • もう迷わない キャットフードの選び方
  • 気まぐれ猫ちゃんのための食事提案
  • 健全な食事の与え方
  • 予防と早期発見
  • もっと知りたい猫ちゃんのこと

6.予防と早期発見

6.予防と早期発見

「 知らないと困る猫ちゃんの病気 」

猫ちゃんを家族に迎えたとき、年齢、飼育環境、健康状態などを把握するために、病院で検診をぜひ受けてください。また、日頃から猫ちゃんの健康維持のために、外見、食欲、便や尿の状態や回数などをさりげなく観察し、病気の早期発見や予防に努めましょう。

  • 予防接種
  • ワクチンが対応する病気
  • 猫ちゃんがかかりやすい病気

予防接種

予防接種

<ワクチン接種>は病原菌などを弱毒化して投与し、免疫力をつけて病気を防ぐためにおこないます。ワクチンには、ウイルスを生きたまま弱毒化した“生ワクチン”と、完全に活性をなくした“不活化ワクチン”があります。また、1種類だけの“単体ワクチン”と数種類を混合した“混合ワクチン(3種/5種/7種)”があります。
完全に病気を予防することはできませんが、ワクチンを接種して免疫抗体を身体のなかに作ることで、そのワクチンに対抗する病気を高確率で予防することができ、また万が一、感染してしまった際の症状を軽減することもできます。

子猫の時期の接種は健康検診を受ける際、獣医師と相談をして、猫ちゃんの入手先、飼育環境、ワクチン接種の有無などを考慮した、独自のワクチンプログラムを作ってもらいましょう。
母猫の初乳を飲んだ子猫は、「移行抗体」という免疫をもらいますが、長くは続きません。「移行抗体」の切れる時期には個体差がありますが、生後8週齢前後だとされています。「移行抗体」のあるうちにワクチンを接種しても満足できる効果が期待できませんので「移行抗体」の切れる時期に追加接種をしましょう。以後は1年に1回、追加接種をしていきますが、専門的な内容になりますので、詳しくは獣医師に相談しましょう。

高齢猫の場合、ワクチンは毎年接種しなければ徐々に効果が落ちてしまいます。さまざまな意見がありますが、高齢猫は体力、免疫力が低下してくるので、病気にもかかりやすくなります。そのため予防接種で防ぐことは大切なことです。
とはいっても、高齢猫への予防接種は体に負担がかかると思う飼い主もいます。飼育環境と猫ちゃんの健康状態を考え、接種するかどうかは、かかりつけの獣医師に相談してください。

ワクチンが対応する病気

ワクチンが対応する病気

猫ウイルス性鼻気管炎

鼻水、目ヤニ、発熱、クシャミ、元気喪失、食欲不振など、猫ヘルペスウイルスの感染によって風邪のような症状をおこします。他のウイルスや細菌などの混合感染により死亡することもあります。

猫カリシウイルス感染症

クシャミ、鼻水、発熱、食欲低下などの症状がみられ、進行すると口の中に潰瘍や水泡ができます。他のウイルスや細菌などの混合感染により、重症化することがあります。感染力は強いですが、成猫には症状が出ない場合もあります。「猫カリシウイルス」が原因です。

猫汎白血球減少症(猫伝染性腸炎)

発熱、嘔吐、食欲不振、下痢、血便、脱水など、パルボウイルスが引きおこす腸炎です。白血球が極端に減少し、体力のない子猫にとっては危険で死亡率の高い病気です。「猫パルボ」や「猫ジステンパー」ともいわれています。

白血病ウイルス感染症

初期には、ゆっくりと進行し元気がない程度ですが、子猫が感染すれば、発熱、食欲不振、下痢、リンパ腺の腫れなどで致死率が高くなります。慢性期では、リンパ腫(体の免疫をつかさどるリンパ球系の腫瘍)、貧血、白血球の減少、免疫力の低下により、細菌感染症や悪性腫瘍などに進行しやすいです。
長期間にわたって感染することもあり、そのような場合には定期検診を受け、常に猫ちゃんの状態に注意する必要があります。

クラミジア感染症

くしゃみ、鼻水、結膜炎など、「猫ウイルス性鼻気管炎」や「猫カリシウイルス感染症」と似た症状がでます。悪化すると肺炎を併発することがあります。

予防接種をしても絶対に病気にかからないとはいえませんが、感染を防いだり症状を軽く済ませることができます。ワクチンも打たずに発病してからでは、治療の時間も長くなりますし、治癒が望めない場合も多くあります。
どのような病気の場合にも、感染している猫ちゃんを他の猫ちゃんに接触させないようにします。発病した猫ちゃんのクシャミ、鼻水、目ヤニなどや、病気の世話をする人についたウイルスからも他の猫ちゃんへ感染することがあります。また、飼い主が気付かずに外から体に付着して持ち帰ったウイルスからの感染や、室内外自由飼育している猫ちゃんが、病気の猫やキャリア猫(発病の可能性のあるウイルスなどを持っている猫)と接触することで感染することもあります。病気の猫ちゃんの世話をした後は、充分に手洗いをおこなうようにしましょう。病気の猫ちゃんの世話はかかりつけの獣医師の指示に従ってください。

猫ちゃんがかかりやすい病気

猫ちゃんがかかりやすい病気

1.猫免疫不全ウイルス感染症(猫エイズ)

このウイルスに感染すると、猫ちゃんの免疫が低下し、さまざまな病気にかかりやすくなります。発病しない場合もありますが、一度、発病するとリンパ腺が腫れたり、下痢が続いたり、他の細菌に感染しやすくなります。症状が進むと口臭、ヨダレが目立ち口内炎のため食事ができなくなります。
ただし、猫免疫不全ウイルスは感染力が弱く、母猫がエイズキャリア(発病していなくてもエイズウイルスをもつ猫)でも感染する子猫は少なく、また、エイズキャリアの猫ちゃんが他の猫ちゃんと舐め合ったり、食器、トイレを一緒に使っても感染しにくいといわれています。感染した猫ちゃんと激しく傷つけ合うようなケンカをしなければ感染の心配はないとされています。

2.下部尿路疾患

「突発性膀胱炎」や「尿路結石」などの原因によることが多く、最近ではストレスからも発症するのではないかという説もあります。症状としてはトイレ以外での排尿、血尿、排尿困難、頻尿、尿路閉塞などが見られます。水を飲む量が少なくなりがちな秋から冬にかけて発症することが多いため、この時期に充分な水が飲めるように気をつけたり、獣医師の診察を受け、対応したフードや水分量の多いウェットフードに切り替えるなどするとよいでしょう。

3.腎臓疾患

腎臓は体内の老廃物の処理をしたり、水分調節、血液中の栄養保持など、大切な役割を果たしています。「慢性腎不全」は高齢猫に多く見られる病気で、水をたくさん飲む、オシッコの量が増えたなどの症状がある場合は、すぐに病院で診てもらう必要があります。機能が低下すると、「尿毒症」から吐き気や食欲不振、下痢などの症状が現れます。悪化すれば脱水症状、硬直性けいれん、貧血のため生命を維持できなくなります。一度失った腎臓の機能を回復することはできませんので、早期に発見し進行を抑えられるように、とくに高齢の猫ちゃんでは定期的に検診を受けましょう。

4.糖尿病

膵臓から分泌されるインスリンという血糖値を下げるホルモンの分泌が低下する「依存性糖尿病」と、インスリンは分泌されているけれども作用が阻害される「非依存性糖尿病」があります。猫ちゃんの場合はインスリン投与の必要のない「非依存性糖尿病」が多く、食事療法で治ることも少なくありません。
飼い主が、最初に気付く症状として多飲多尿が挙げられます。他にも、感染症にかかりやすくなり、他の病気で受診して獣医師が気付くことも多くあります。
予防のため、ストレスのない生活をさせ、肥満にさせないように注意しましょう。
現在では、発病しても獣医師の指示に従って管理をしっかりすれば、寿命を全うすることもよくあります。なによりも早期発見が大切です。

5.甲状腺機能亢進症

甲状腺からは身体機能(代謝、体温、血圧、心拍数や消化機能の調節)に関するホルモンが分泌されます。それが過剰に分泌されることにより発症する病気です。高齢になるほど発症しやすい病気で、食欲があるのに痩せてくる、下痢や嘔吐、皮膚や被毛の状態の悪化、高齢なのに活発すぎるなどの症状が出ます。定期健診を受けて、早期発見に努めましょう。

6.歯周病

成猫の60〜80%は歯周病にかかるといわれています。歯周病は口の中にいる細菌が、食べカスを栄養として増殖することが原因でおきる病気です。細菌が歯の表面で増殖すると歯垢となり、歯垢が進み固まると歯石になります。
歯垢や歯石をたまったままにしておくと、「歯肉炎」や「歯槽膿漏」になることもあります。進行すると抜歯も考えなければならなくなります。獣医師の診察を受け、必要があれば歯石除去をしてもらうことも大切です。歯石除去には麻酔を使用しますので、高齢猫や肝臓や腎臓に障害のある場合は獣医師に相談しましょう。子猫の時期からの習慣的なオーラルケアが大切です。

7.便秘

排便の回数が極端に少なかったり、トイレでいきんでも便が出ない時には便秘の可能性があります。便が乾燥して固くなり排便しにくくなっておきることが多くあります。大腸の働きが弱くなったり、事故などによる骨盤骨折などで便の通り道が狭くなるために発症することも多いです。軽症であれば、繊維質の多い食事と水分補給によって、症状を緩和させることもできますが、獣医師による処置が必要なこともあります。

コラム:いざという時の「ペット保険」

コラム:いざという時の「ペット保険」

医療の進歩とともに、ペットの寿命も今までに比べて飛躍的に伸びています。例え重篤な状態になったとしても、一緒に暮らす猫ちゃんには、できる限りの治療をしてあげたいと思うものですが、健康保険のない猫ちゃんの医療費を飼い主はいったい、いくら用意すればいいのでしょうか?
医療費は飼い主にとって大きな負担であるとはいえ、もしもの時は充分な治療ができるようにしたいものです。
ペット保険は、ペットが動物病院で医療行為を受けた時に、治療費の一部を、加入保険会社に負担してもらうためにできました。会社により保障内容が違い、加入できる年齢、保障年齢制限、保険の支払い対象外となる事項、利用できる病院の制限などの違いがあります。
もしもの時の安心となるはずの保険が、必要な時にしっかり受けられなければ意味がありません。ペット保険に加入する時は、各社の保障内容や保険料の金額などをじっくり検討しましょう。

監修:桑原久美子
日本獣医畜産大学(現日本獣医生命科学大学)獣医学部卒業。
神奈川県藤沢市 桑原動物病院副院長。
開業しながら、多数の犬・猫・小鳥を伴侶にし、経験をもとに獣医師と患者の立場で執筆活動をしている。主な著書に「正しいネコごはん 愛のQ&Aブック」(角川グループパブリッシング)、「新・子ネコの育て方百科―誕生から12ヶ月まで ネコの気持ちがわかるやさしい育児書」(誠文堂新光社)がある。